2013年04月29日

紫陽花

水無月の雨は絹糸のように
あなたにふりそそぐ
ひすい色の葉に浮かぶ
ふくよかな艶姿(あですがた)

ひと粒の愁いは
いくつもの愁いに木霊して
ふるえたまるい輪郭の
愁いの花輪は雨に染む

 雨も涙も消えるとき
 もう透明ではなかったの
 こぼれた場所の色に
 なったから

 あなたと同じね

咲きこぼれた場所の土の性で
あなたは土の希みの色となり
どんより雲に雨を呼んでいる

 かすったら鼓動は白くゆれ
 紫に吐く息はかたむき色づいて
 見つめたら ほてる肌熱く熟れ
 いかないで…見送った 蒼い露

ふりやまない水無月の雨
ぬれても なお つめたく
ぬれるほどに愁いは冴えかえり
あなたのむごんの雫
いくつもの雨にまみれて





 
posted by 水月 りら at 16:33| | 更新情報をチェックする

2013年04月28日

沈丁花

日溜まりがやわらかになる頃に
君は目覚める
艶色(にじいろ)の微笑み 漂う願い
遠く離れていても君の薫り 僕に届く

僕の心のとびらをあけて
君の薫りのひとしずく
僕の心で泡のように拡がって
僕の心に映る小さな花びら 君の横顔
頬を紅く染め 唇にさす白の紅 
葉影でなびく ほそい髪

君がここにいなくても 君が揺れている
君がそばにいなくても 僕は君の中

いつか 枯れてしまっても 君は君だよ
いつか 萎えてしまっても 君は君だよ

ひと雨に春を呼び 君は消されていく
こんなに夢中な残り香を
まっすぐに浴びながら
ひとり 僕は 佇んでいた

ほのかな温もりに酔いながら
ひとり 僕は立ち止まっていた
また ひらくだろうか
君の心のとびらのそばで





posted by 水月 りら at 22:04| | 更新情報をチェックする

2013年04月27日

山芍薬

ぼくはきみに逢いたくて
此処まで辿りついてきた

無造作に伸びた 
さえぎる太い枝をかきわけて
険しく長い登り道 
尖った岩の上を渡り歩いて 
ぼくはきみに逢うためにここまで
辿りついてきたけれど

華奢な茎が風に揺れ 
萌葱の葉が手を伸ばし 
はらはら落ちる白い花びら 
包まれていた黄色の雄蕊は
紅い雌蕊に傷み染まらせて 
此処にこわれた花びらの夢

ひとりきりで咲いていた山野の奥深く 
実を結ぶため生きいそぎ 
たまゆらの命と知りつつも 
流れる刻を遅れがけ 
散ることを選び夕陽の紅に散っていく

山芍薬のほのかな香りのみ 
ぼくは此処に縛られて 
杭に打たれる 記憶の断片 

誰にも告げられないままに
悔いに打たれた ひとひらの影
ひっそりと溶けていた 
山芍薬の白い眠りのなか






posted by 水月 りら at 23:22| | 更新情報をチェックする

2013年04月26日

AGEHA蝶

生まれたばかりの
縞模様(ストライプ)の羽根は
渇くのをじっと 待っている
閉じた扉のように

たとえ 君を好きだとしても
君をいざなうことはしないだろう
たとえ 君を抱きしめたくても
ぼくの穢れた手を
差し出すことはしないだろう

太陽から搾る 光の帯が
君に 降り注ぐ
はじめて誰かに
抱かれていくように
黒真珠色の 愁いが
陽光に ほどけていく

君の濡れた睫毛が 揺れうごき
開く扉に 縞模様の万華鏡
空へと向かい 乱舞する
鮮やかな 弧を
えがき



posted by 水月 りら at 22:17| | 更新情報をチェックする

2013年04月25日

潮風

きみが果てしない海を
小さな船で渡るのなら わたしは
きみを浮かべる おだやかな海でいたい
わたしはきみの涙の落ちる場所
いくつもの涙を受けとめて
あたたかな潮風となり
きみの船を包んでいよう
がんばることに疲れたきみが
月のようなやわらかな光のなかで
小さな闇もうすれて千切れてゆくような
心休まる場所に運んでいる
しゃぼん玉の夢を
きみの未来にふくらませている










posted by 水月 りら at 22:21| | 更新情報をチェックする

2013年04月24日

なごりゆき

ゆきはふる
ふゆがれから めざめかけていた
ひすいいろの じゅりんにも
ついらくした ゆきぐもは
こごえたきりの けしんとなり
じゅりんを おおう

まよいは ふかく
ゆきは ふり
しろいやみは たちこめて
しろいかぜに あれくるい
ふきだすように ふるゆきに
さえぎられた しかいのまど
しろのふかみに はまっている

まどっている
もどっている

じゅりんの くろいかげさえも
しろいうつつへ ぬりかえて
ゆきは ふる
おともなく
おしみなく
くるものを とおざけて
ちんもくのしろを まもろうと
ゆきは ふる

しろは とうめいではなかったの
しろは けっぱくでもなかったの

ゆきは ふる
じゅんすいに つみにまぎれ
いろをうばって はんしゃして
しろく しろく
きえることを たちきれず
はるの すきまに
こぼれた なごり
ゆきは ふる





posted by 水月 りら at 16:56| | 更新情報をチェックする

2013年04月22日

ほしのすな

こびんからながれおちる ほしのすな
このてのひらに うけとめていたいのに
ゆびのあいだに すきまがうまれ
こぼれおちてゆく

あのひ わけあっていた 
ときのかけらのように
すこしずつ ためらいもなく
すくなくなってゆく
なのに なにもできずに ちからなく 
なくなってゆくものを ただみつめ
てのひらが ぬけがらになってゆく

からっぽのまま こぼしたものは
なにも もどらなかった
さみしいと べつのもので 
てのひらをみたすことは できるけど
それは あのときつかんだものと
おなじかんしょくではなくて……

こぼれては なにかをすくい
こぼしては なにかをひらい
どうしてだろう
こんなに あたためていたいのに

てのひらのあせに まみれて
ぶきような すきまから
なくなってしまう

かけがえのないもの
あなたのはいた いきが
ふっと しろくみえた
そのしゅんかん






posted by 水月 りら at 21:56| | 更新情報をチェックする

2013年04月21日

砂時計 Ⅱ

Part 3

ひとつのくうかんが みたされてゆくと
ひとつのくうかんが からっぽになってゆく

いんりょくは ふたつとも
みたすことは できないの
ふたつとも みたされることは
ふかのうなことなのね

ひとつだけ 
みたされているはずなのに
からっぽのくうかんが さみしくて
もうひとつを みたしたくなる
そんな ふかんぜんなくうかんを
ながれたり もどったりして
ときは すりへってゆく

みたされることのない
ふたつのくうかんが
ほどよくバランスをとりあうために
わりきれないものが
うまれてくるのだろうか

なにかをひとつ みつけたら
じかんはゆがみ ゆるやかに
なにかをひとつ うしなったら
じかんはねじれ ゆびさきにうずもれて
ひとすじのみちに たばねられ
なにを つみかさねてゆくのだろうか

そこには むしょくのくうはくが
さばくのように ひろがっていただけ……







Part 4

いきどまりに見えていた空には
ひとつぶの空間がひらいていた

からっぽの空をかんじたら
世界をひっくりかえせばいい

地面にあいた ありじごくを通り抜け
ながれながれて ひとつの空間に

気がつけば いつだって
いつのまにか からっぽの空へと
たどりつく

こころには こんな空間が
きっと いくつもあるのだろう

ひとつぶが つながるために
えがかれた ほそい道すじに
知らない空白と知らない空白は
知らないうちにつながって
生まれていたのは
交わす言葉のひとことだった

そのひとことの速度は
むきあうものを左右する
かたつむりの這う音のように
にじが消えるため息のように
移り変わる一秒の表情

あなのあいた地面から
風の色をさがして
知らない時間をのぞいてみる

あなのあいた空から
流れ落ちた砂をそっと
ゆびのすきまに重ねていた





posted by 水月 りら at 19:34| | 更新情報をチェックする

2013年04月20日

砂時計

Part 1

そらだとおもっていたばしょが
ちじょうだったのかもしれない

ちじょうだとおもっていたばしょが
そらだったのかもしれない

ひとは おおきなごかいをしんじて

そらのさいはてにあいてしまった
おおきなあなに てをのばし
ついらくのゆめを ながめながら
はばたいてゆく さいはてへ

さいはてから 
ちじょうにちらばる そらのかけら
そこから にじみあふれた 
ひかりのひとすじは
はびこるまぼろしに まみれて
ちいさなてのひらに 
うけとめらてゆく




Part 2

さらさらごぼれる砂時計
落下は変化を告げる
時の流れのままに
天と地のあわいの道を
何度も行き交う時を
追い越したくて

 人にはいつも 
 ふたつの空間が存在するのだろうか
 鏡を見るように にているけれど
 時計の針が逆周りしている空間が 
 人の心を迷いへと誘っているのだろうか

さらさらこぼれて砂時計
ひとにぎりの空間には ひとにぎりの砂しか
うけとめられないのに それ以上の
砂をにぎりしめたくなるのは
人だからだろうか?

 もうひとつの空間に砂を落として
 からっぽになるのがこわくて
 からっぽになるまえに
 さかさまにしてしまうのは
 わたし、だけ……?

さいごのひと粒が
もうひとつぶの空間をみたす時
ふたたび さかさまにしてみれば
リセットの始まりを迎えるけれど
ふたたび こぼれては失ってゆく
もうひとつの空間を
満たしてゆくために

ひとつの終わりは区切りのように
いつも こんなふうに訪れて
陽炎のようなやさしさが散らばって
ガラスのように冷めてゆく
かぎりあるぬくもりが
さいごの一粒に落ちてゆく瞬間、

そばにいてほしいと
極限の一秒に求めた涙の跡
さいごの一粒の辿るストーリー
からっぽの瞬間にふたたび始まる
あなたへと落下するほど
砂は熱さを知ってゆく










posted by 水月 りら at 17:28| | 更新情報をチェックする

2013年04月19日

おかえりなさい

雨    

あなたの てのひらに
ポツンと 一雫
かなたの 空から
まっすぐに 墜ちてきた
限りなく 一点に



紅椿      

形のあるまま 墜ちていくこと
あなたに 届きますか
魂が別の世界に 逝ってしまっても
枯れた 紅(くれない)を
抜け殻の 花びらを
干からびた 蜜を
抱きしめてくれるでしょうか



 雫    

蒼い果実を しぼる
すっぱい果汁が 口にしみこむ
ツンとからだを 突き抜けて
にがいなみだが とびちり
ちらばった 雫のあと

熟れた果実を しぼる
あまい果汁が 口にひろがる
美味しくて いやされて
いずみが あふれて
はじけて おぼれてく

もぎたての果実を しぼる
生まれたての果汁が とびこえて
まるい月に 満ちていく
さいごの雫 秘めておく
百年後のくちづけのために





萎えても    

萎えたるは 萎えたるままに
和らぐ光に移ろいて 
ゆるやかな影深く
身から滲む 
汗ばんでいた時の滴




あめふり

てるてるぼうずに
にっこりがおを かいてみる
あおいそらに あいたくて
みがきかけていた たいように
ねがいをこめる
どしゃぶりの あめンなか
おげんきですかと
とどいた てがみ








posted by 水月 りら at 22:12| Comment(0) | ポエム | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。