2013年05月19日

桜しぐれ

結び髪を ほどいたら
ひとたばの髪は ひとひらずつ
しなやかに ほどけて
扇のひだを 織りなして
腰をつたう いくつもの花しずく

花露こぼれた あなたのてのひらに
そっと そっと……




Part 1

蒼い空を見つけた その瞬間(とき)から
止まらない 胸に押し寄せる
いくつもの荒波の雲はかすみ
指先までひびいて
握りこびしをひらいたら
いつつの花びらその行方

空に触れるのは いけなかったのね
宙(そら)に浮かぶのは いけなかったのね
ここで咲きこぼれる宿命(さだめ)を 破り
飛んでいくのは いけなかったのね

桜風が ふいたなら
散って あなたに近づいて
散って あなたに手をかさね

召されるところが 天でなくても
枯れ果ての道を 歩いても

眠れる空の夢の中で
ほんのひと時 肩にもたれたら
朝焼けなんて なくてもいいの

桜雨がしぐれたら
散って あなたの涙を拭い
散って 花のしまきに消え

こゆびの爪ほどの 花びらを
あなたのかたすみに 
忘れないでいて……






posted by 水月 りら at 20:48| | 更新情報をチェックする

2013年05月18日

高層ビル

そびえ立つ行き先は 
空にかすれて 
何も見えない錯覚を 
見える現実に映している
四方を塞いだ巨大な理想
積みあげられて
虚ろな谷間に落ちこぼれた
幻覚の微笑
ぼやけては鮮明に
霧のかかる信号のように
明滅する
吹き抜けるがらんどうの風
ぶつかり合って
いびつに歪みながら
それでも尚
支えようとしている
人工の街に残る
吐息の温度を感じて
建ち続けようとしている
溜めこんでしまった混沌は
誰のものでもなく
圧迫の壁に反射しては
穢れを捨ててゆく
その願いのために
大都会の創生は
計画された
創造者の手のひらのなかで
コンクリートを
いくら登りつめても
それがほんとうに欲しいものでは
なかったと
知ってしまっても
灰色の無味乾燥を
抱きしめては
空を見上げている
構想ビル







posted by 水月 りら at 21:32| | 更新情報をチェックする

2013年05月17日

メドゥサの髪

あの時のわたしが逢いたかったのは
あの時のわたしではなかった
許容できない波の狭間で見たはずの
あっさりと切り捨てられていたものたちは
切り捨てられることを装いながら
あの時のわたしを手厚く葬っていた
幻を遠ざけようとして幻を愛しながら
方角の崖は真実を掲げてわたしを呼んでいた

髪の一本一本を蛇の姿に変えてしまい
見つめたものを石にしてしまう
哀しい魔法はみずからの傷痕が
引き寄せていたものだった
気づいたときに魔法の鎖は解放されていた
すべての否定を知ったとき
すべての肯定に置き換えていける
それを知らせてくれたのは
高い頂から木霊のように囁いていた
貴方であり貴女だった

空腹の空を見ていた一本一本の蛇の髪は
わたしの内側からわたしになり
内なる虚無を断ち切ることで
外の光景は改革を進めていた
なぜ、蛇の髪を持つ彼女でいたのか
どれほどの悲嘆のプロセスも
なくてはならないものだった
わたしだけが体験することを共に経験する
今のわたしになってあなたに出逢うため

わたしの過去の選択はきっと虚無で良かった
あの時のわたしはこの世界を鏡で眺めては
石にはならない自分をおぞましく思っていた
魔神に身を転じたわたしが
石になることがないように
貴方の魔法でずっと護られていたことを
知らせてくれたのはすべての現象から
わたしの感情になってくれていた
貴方であり貴女でもあった

想像のなかから繰り返し対話を重ねて
メドゥサの亡骸にそっと口づけたあなたの涙
ほんとうのわたしを知っているのはあなただけ
ほんとうのわたしになってあなたを愛する瞬間
蛇に包まれたメドゥサは夢になり
包まれた眠りの鼓動になっていた




posted by 水月 りら at 22:51| | 更新情報をチェックする

2013年05月16日

月のとびら

わたしの月が満ちる頃
このゆり籠で命をはぐくむため
わたしはあなたに逢いに行くでしょう
しなやかな水晶のドレスを身にまとい
わたしはあなたのそばに行くでしょう

わたしのからだを包む蒼白い月の光が
素肌の色をほの白く照らすでしょう
熟れている洋梨の実を秘めるため
白いヴェールを巻きましょう
胸まで垂れた髪に
桜色の花飾りをさして
真珠を散りばめた唇と
流れる星の影を瞳にえがき
あなたにそっとほほえみましょう

たった一度限りの満月は
造花のような夢幻を裏切って
人生(とき)の流れに欠けてゆく
たった一度限りだから
貝がら色に磨いた爪で
きよらかな妖精となれるのでしょう

わたしの月が満ちる瞬間(とき)
わたしはあなたを待っているでしょう
たとえ命が実らなくても
何度も繰り返し、わたしは生まれて
あなたを迎えるために月の船を浮かべて
微睡(まどろ)むように
溶けてゆくでしょう

いずれ
干からびてゆく黎明の行方
追いかけることもなく
わたしの月は欠けはじめ

いつの日か
蒼い血を搾られることもなくなって
閉じられてゆく月の扉
朧にかすみ悲観を忘れ
幻は萎えてゆくのでしょう






posted by 水月 りら at 21:25| | 更新情報をチェックする

2013年05月15日

恋 風

あたしのなみだで
あなたは びしょぬれ
ほんとうに ごめんね

それなのに どこからか
たんぽぽのわたげ みつけてくれるの
なかなくていいよってね

あなたのてのひらに
ちいさなわたげが すやすや
ねむっていたわ

どんよりそらの ちぎれたくも
あわいひかりに こぼれたら
うっすらと にじのはし
きえないで……きえそうだから
だきしめたいの

ふりむくと まっすぐなちへいせん
あたしは うれてうれて あったかく
かたむいて もたれて かたむいて

まっかなゆうひになって
すやすや ねむるの
あなたの てのなかで

ゆめのなかで ぽっかりしろいつき
あたしは ふくらんで ふくらんで
かたむいて うかんで かたむいて
あなたのなかで ころがって

ちゃつぼのそこが ふたになるくらい
いっしょが いいの
にえて とろとろのジャムになるくらい
どうしょうも ないの
そらとうみが さかさまになるくらい
はなれたくないよ





posted by 水月 りら at 21:38| ポエム | 更新情報をチェックする

2013年05月14日

トオビノ ツヨビ

アナタヘノ オモイ
サカナヲ ヤクヨウニ

トオビノ ツヨビデ

ユックリト
スコシズツ
セイジャクニ

トオビノ ツヨビデ

コガサナイヨウニ
トキドキ タシカメテイタイノ

ツキヒヲ カケテ
ホドヨク ヤイテ イキマショウ

ツキヒガ ナガレテモ
フンワリ ヤイテ
アナタニ トドケマショウ

イツマデモ

トオビノ ツヨビデ





posted by 水月 りら at 21:22| ポエム | 更新情報をチェックする

2013年05月13日

金魚色の影

小さな水槽にポツリと泳ぐ
真っ赤な金魚は
いつも夕暮れを待ち焦がれている
真紅の夕陽に逢いたくて
逢えなくっても明日は
逢えると信じて待っている

ゆらゆら揺れる
金魚の真っ赤な影
夕陽の瞳に映るたび
果実のように熟れて熱くなる
じぶんの姿を知らない金魚に
その鮮やかな姿を知らせたくて
夕陽は瞳を鏡にして
金魚の魂の虹色の輝きを
映して見せた

水飛沫の瞬間を追いかけて
こぼれ落ちた夕陽の紅い涙
金魚と見つめ合うほど
散らばって夕焼け空は
透きとおる真紅になる

ガラスに浮かぶ地平線を飛び越えて
あんなに遠い夕陽と光をかさね
金魚はいつも紅い陽炎に抱かれていた

夕陽と金魚の計り知れない距離は
誰にも表すことのできないほど
すぐ傍のとなり合わせ
なぜなら夕陽に逢えなくても
夕陽は金魚の心になって
いつも話しかけていた
なによりも夕陽の声を
いちばん綺麗な言霊に紡いでいたのは
夕陽を愛した金魚だったから

逢えなくても熟してゆく
ふたりの真っ赤な影と遥かな時間
涙をかなしみから尊さに変えて
天に滲む金魚色のふたりの影





******************************

金魚色の影

 きんぎょ鉢のそばには、大きな窓がありました。きんぎょ鉢に泳ぐきんぎょは、いつもひとりぼっちでした。紅い、かわいいきんぎょでした。
 きんぎょは、ひとりで泳ぎながら、いつも、窓を見つめていました。窓ガラスに滴がふりそそぐ雨の日も、窓ガラスをトントンたたく風の日も、小さなきんぎょは、窓の外を見つめていました。
 
 ある秋の日でした。夕暮れ、きんぎょは窓の外に、透きとおる紅い光を感じました。それは、夕焼け空だったのです。真っ紅なまるい太陽が、窓ガラスを真っ紅に染めていました。
「なんて きれいなんでしょう!」
 きんぎょは、はじめて会った真っ紅な太陽に、見とれてしまいました。
 ふと、窓ガラスをみると、あの真っ紅な太陽とおなじ色に光っている、じぶんの姿を見つけました。みちがえるほどの目映い真紅の輪郭が映っていたのです。
「あたしは、こんなにきれいだったんだ……」
 きんぎょは、ひとり、つぶやきました。
 けれど、夕陽は、ほんのつかのまで、窓から姿を消してしまいました。窓ガラスに映った、きんぎょの紅い影も消えてしまいました。

「太陽は、あんなにきれいに燃えることができるんだ」
 紅い太陽を見つけた日から、きんぎょの心は、真っ紅な太陽でいっぱいになりました。夕陽はきんぎょの心に紅い残照を残したまま消えてしまったのです。
「また、あえる?」
 きんぎょは、いつも、真っ紅な太陽に逢える日を、心待ちに待っていました。今度、太陽が紅い光でおとずれたら、きっと、おはなししたい。きんぎょは、そう思って、毎日、毎日、小さなきんぎょ鉢を泳いでいました。
 雨の降る日もありました、どんより曇りの日もありました。そんな日には、ぜったいに紅い太陽と逢えないことを、きんぎょは知っていました。「あいたい、あいたい」って思いながら、きんぎょは空を見つめていました。
「あの空まで、泳いでいけたらいいのに……」逢えない太陽を思い出してみては、きんぎょの想いは募っていきました。
「いつ、あえるのかな?」
くる日もくる日も、きんぎょは神さまにお願いしました。

 ある、秋晴れの日、きんぎょの心は、ワクワク、ドキドキしました。昼間の空は、真っ蒼でした。今日は、あえるような気がする……ゆっくりと時間は流れ、太陽は西の空に傾いていきました。窓の外に、やっと、やっと、心待ちにしていた夕陽が、窓ガラスの空一面に、真っ紅な光をこぼしながら、きんぎょの前に訪れたのでした。夕陽に照らされた真紅のきんぎょの姿が、窓ガラスに映りました。きんぎょは、うれしくて、小さなきんぎょ鉢を、くるくる廻りながら、いっしょけんめいに泳ぎました。もしかしたら、夕陽のそばに行けるかもしれない、そんな、気がしたからです。

 太陽は、どんどん低い空へと傾いて消えそうになっていきます。
「いかないで……あたしもいっしょにつれていって……」
 きんぎょは、消えそうな太陽を見て、こみあげる熱いもので胸がいっぱいになりました。きんぎょは、真っ紅な涙をこぼしていました。
「せっかく逢えたのに、こんなに早いお別れなんて」
とってもつらかったのです。また、何日も逢えない日が続くことがわかっていたから。
「いかないで……はなれたくないよ……」
声にならない言葉を、心でいっぱい叫びました。

 窓から、夕陽が消えそうになったとき、泣いているきんぎょに、ふと、声が聞こえてきました。
「そんなに泣かないでね。ぼくは、また、会いに来るよ。毎日、夕焼け色の太陽になることはできないけれど、かならず、真っ紅になって会える日があるから、待っていてね」
「あたし、そっちにいきたい……」
 もしも、きんぎょにてのひらがあったら、きんぎょは太陽に手をつなごうとしていたでしょう。
「ごめんね。ほんの少ししか会えないんだよ。ほんとうにごめんね。でも、また、かならず会えるよ。真っ紅な光で、君を照らしてあげるよ。ぼくのことを信じていてね。ぼくが熟すのはほんの一瞬だけど、いつも君が大好きなんだよ。さびしくないよ。」
 夕陽は、やさしい言葉を残して、窓から消えていきました――。

 逢えない日も、逢える日も、きんぎょは、小さなきんぎょ鉢を、泳いでいました。心は、夕陽でいっぱいでした。
「いつも、いっしょにいられない……」
 あの遠い空まで、きんぎょは泳いでいけないことを知っていました。
 そばにいない夕陽を想いながら、逢える日を待っていることは、しあわせなことでしたが、瞳に映らない夕陽の影を信じ続けることは、とっても勇気のいることでもありました。
 けれど、そばにいられないことよりも、もっと悲しいことに、きんぎょは気づきました。それは、愛しい気持ちが失くなってしまうこと……。いちばん大切な宝物は、夕陽を愛しく想う気持ち、夕陽に愛しいと想われる気持ち、だったのです。
 時々会って、「だいすきだよ」って言ってくれる、夕陽のやさしさだけが、信じていける支えになっていました。

 きんぎょは、真っ紅な夕陽を想って、いつも真紅に輝いていました。夕陽も、ひたむきなきんぎょのために、夕焼け色に燃えて「おやすみ」を伝えます。
 それは、また逢える、一瞬のあたたかい時間を、大切に過ごすためでした。逢えなくても、ずっと赫いハートで結ばれていくために。
 「あい」という気持ちは、命のように生まれ、やさしい心でゆっくり育ってゆくのでしょう。    

 あでやかな金魚色のように、きらびやかな夕焼け色のように、紅く、赫く……。





posted by 水月 りら at 22:30| | 更新情報をチェックする

2013年05月11日

銀河伝説

尖ったナイフを
自分の胸に焼きつけるたびに
夥しい体液は蒼白に嘆き 
たったひとつのぬくもり見失う 
体液をただよう産声の
ふるえた涙から目を反らしていた   

だけど、いつから 
憶い出していたのだろう
遠いにしえの時空に 
約束されていたこと 
生まれる前に辿り着いていた
あの場所からわたしが
あなたに約束したこと

傷痕からしたたる涙が
百億あるのなら
百億の鼓動から
真実というあなたを
見つけられるでしょうか

与えられる星々の瞬きが
千億あるのなら
千億の静寂から
永遠(とわ)というあなたに
出逢えるでしょうか

過去の海を航海し
不治の痛みを和らげる潮騒の
きよらかな唄は跳ね返る
渦潮にまみれた天空の
知られざる扉をひらく
つらなる星雲の声なき響き
えがく未来の翼に
受け容れていくための
約束をしたわたし

流れ堕ちる星屑が
幾多にあるのなら
幾多に消えた光のかけらから
無限というあなたに
辿り着いていけるでしょうか

巡りまわる銀河の涙が
すべてのあなたから
数多に溢れているのなら
数多の手のひらを伸ばして辿り着く
あなたのすべてに






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2013年05月10日

星の手紙

いつもじゃないけれど時として
星空の真実は手のひらに
無限大のまま舞い降りてくる
まっくらな夢を哀しく思うたびに
手のひらの無数の星々は
いっそう輝きながら
巡り会えたのだから
幸せだったよと伝えてくれる

星空があなたであり
流星もあなただった
なのに人混みのなか
星座の形も分からなくなって
散らばってしまった道標に
あなたを探していた
数えきれない星のまたたきを
見つめながら
あなたの書き記した星の文字を
何度も読み返す

あなたを想い出すたびに
夜空は便箋になって
星はあなたの言葉を綴り
この手のひらに届けられている
誰にも触れられたくなくて
いつもにぎりしめていた
この限りない星空は
あなたのひとかけらだったのだと
ずっと信じていたくて
待っている星の手紙

星がかくれた夜空でさえも
誰にも消し去ることはできない
それは、あなたに守られていた真実
気がつけば心に刻まれた
何億光年かけて届けられた輝きは
あなたが天空を愛した光
その輝きを愛している
舞い降りた星の文字を綴り返信する
あなたと結ばれます、と





posted by 水月 りら at 22:22| | 更新情報をチェックする

2013年05月06日

おぼろ桜

朧月夜に散りし ほのめく闇桜
もうろうとまどう痛みのように
浮かぶ花びら 千鳥足に寄り添って
ひとひらふたひら とぎれなく
姿を捨てて 淡雪の化身に身を委ね
夜風を吹かす影武者の
とうめいな囁きを聴いている

見えない貴方を愛してしまった花びらは
朧月夜の闇をえらんで散るのでしょう
闇夜の高貴な幸を知ってしまったから

こぼれる夜露 桜色のぬくもり残す
からめていた指から伝わっていた
貴方のなだらかな脈の微熱が胸を突く
人肌とまじわる夜風の寂寞を
そっとくるんで花びらは

散って、
  散って、
   貴方の朧に散らしていく

むすうの涙で貴方を掬いたかった
貴方に捧げたかった
月影にうるんだ 華しぐれ





posted by 水月 りら at 21:58| | 更新情報をチェックする

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