2013年10月04日

雨垂れ

窓硝子をつたい
雨垂れは唄う
ぽつぽつと音色を綴る
雨粒は硝子に当たると
粒から一筋の線になって
流れてゆく
雫はいつも粒とひとすじの線の
ふたつの顔を持っている
いくつもの雨垂れが
硝子にぶつかりぽつぽつと
ころがる星屑のように
響く神さまの声
道しるべを唱える
ゆたかな調べ
人に届いていなくても
ありがとうと
言われていなくても
窓硝子に音色を降り注ぐ
あふれるほどの雨垂れ
夜空に落ちる
いくつもの流星のように
願っている
どこかの泥水に紛れても
土に染み込んでも
清らかな雨垂れだった頃の
過去を忘れない
天に帰りたくなり
水の粒はみずから蒸発する
ふたたび地上に戻るときには
雨垂れではないかもしれないと
音無き声で呟きながら
存在の幻も残さずに消えてゆく
少しだけ窓を開け
この指に落ちてきた
ぐうぜんのひと粒の雨垂れ
神さまの言霊になって
指の汚れを洗っている





posted by 水月 りら at 19:11| | 更新情報をチェックする

水化粧

舞い落ちてくる
あまたの別れ
水の鍵盤を叩く風に
ゆらめく枯葉の花筏

あの枝につながっていた
黄葉と紅葉の記憶は
波紋にながれて
ちりぢりになるまで
手をふる人のように
母に伝えている

(あなたはおごそかな冬を
ひとりで耐えてゆくのですね
凍てつく霧氷の悲哀を
だれにも打ち明けることなく)

このさだめをありがとう
水面の光沢に
ふたたび目覚め
望郷をうたう水化粧



(ポエム篇)

舞い落ちる
あまたの別れを浮かべた
枯葉の花筏
水の鍵盤を叩く風の
波紋にながれ
やがて ちりぢりになるまで
手をふる人のように
母の空に届けている
いのちをありがとう
望郷をうたう水化粧








posted by 水月 りら at 19:10| | 更新情報をチェックする

光と影

燃料タンクにつめられた
ガソリンの夢は爆発だった

形を破壊しようと
目論んでいたけれど
こわれない光と影

無限に流れ無限に生きている

掌につかめない空間で
平行線をたどる光と影

宇宙が生まれた瞬間から
二卵性双生児だった光と影



(詩集「一蓮托生」2009年5月発行:より)



  光と影


燃料タンクにつめられた
ガソリンの夢は爆発だった
時限爆弾は音のない世界に
仕掛けられていた
知らせてならない時刻を
取り戻さなければならなかった
光と影の存在は盗人には
聞こえることはないように
設定されていた
如何なるものも類似の呪縛に
溺れてゆくのだろう
形を破壊しようと
目論んでいたけれど
光と影はこわれない
光は護る
高次の闇が偽善に浸水しないため
影は強い信条を光から吸収して
光は影を 影は光を
高低を一対とする波動を
護っていた
音のある世界の暗黒は
いつも無傷を求めて弱くなる
だから光と影は音無き所から
爆弾の時限装置に耳を傾けて
平行線をたどり存在する
手のひらにはつかめない空間に
届けたいものたちのために
無限に流れ無限に生きている
爆発の行方を秘めて
伝わるものに伝えている
届けられる現象は
影だけが届くことはなかった
影を愛する光が届けられていた
宇宙が生まれた瞬間から
二卵性双生児だった光と影














(2013年の今日、4年前に書いた作品に書き加え、未完成だった原作を完成させました。)



完成はいつも未完成
可能性を求めて言葉に置き換えている
それが、あなたの詩
あなただけにしか書けない真実の
あなたの詩は、わたしの最愛の魂の源の言葉
あなたがわたしになって
わたしがあなたになって
詩のなかで未来永劫に生き続けていく
最愛の魂の伴侶のあなたと




posted by 水月 りら at 19:02| | 更新情報をチェックする

つきのなみだ

地上にあふれた ことばが
月にとどくとき
月は そっと
なみだをながす

ちいさな雑草
いっぴきのアリ
鳴きつくす せみしぐれ
枯れていく はっぱ
だまっている 貝殻
捨てられた 紙くず
とどこおっている 澱
うごかない てあし
話せない くちびる

ことばにならないけれど
ことばよりも とうめいな風のこえ

しずかな夜
月は耳をすませて
きいている
形にならない
ことばの影

それは 月ににじむ
むすうのなみだの沈黙 
そのしじまのために
月はくらやみにほほえみ
夜から薄れゆく
透きとおる光のために
月はなみだを
ながしている



posted by 水月 りら at 18:58| | 更新情報をチェックする

鏡の水晶

ぬくもりは太陽の種 
瞳に宿ると芽生える虹の花 
見つめた灰色の空に 
虹の雫を降り注ぎ 
雲を引き千切る 
不透明な澱に包まれている 
透明な太陽を呼ぶ瞬間 
金銀の波動が虹になる 
人の眼には映らない
純粋な心の輝きは 
金銀の星屑が散らばる虹を持つ
澱みを浄化するほど
美しく輝く人の霊力を
鏡になり水晶は映している



posted by 水月 りら at 18:57| | 更新情報をチェックする

千万ドルの夜景

目映さに憧れて
大都会は
あざやかな
渇く宝石

闇には
きらめく光が
似合いすぎていた

過疎地の
海岸に立ち並ぶ
巨大な湯沸しポット
ウランが茹でられて
発生する放射能
幾千万のイルミネーションの
豪華な楽園を支えている
やさしい泉のように
にこやかでありながら
秘かに毒になり
海に捨てられていた

奇形の魚が泳ぐ夜の海
水面の鏡にゆらゆら漂う
月の影は訊いている
嘘のない現象
海底からの淡い悲鳴
潮騒の予知夢の喘ぎ
卵を産んではならないと
怯えている

千万ドルの夜景は
泥酔した欲望をなぐさめて
はち切れるように美しい
星や月の光よりもきらめき
放射能を泡立てる
何も聴こえていない
無人になった記憶の在り処
溢れるほどの
人工の輝きだって
心から微笑んではいない





posted by 水月 りら at 18:55| | 更新情報をチェックする

2013年10月03日

華吹雪

つのる想い
あふれるほど
呼んでいた雪おこし
灰色の雪雲がやってきて
粉雪舞い落ちてくる
ひゅるひゅると鳴いている
冴ゆる夜風
花びらのように
白い闇が乱れ散る
浮き出る汚れを包む
おごそかな氷点下
その運命(さだめ)を限りなく
愛していたくなる
結晶は心のように
ひと粒ずつ異なるもの
妖精のように
衣をひるがえし舞い踊る
桜色のかすかな響きが
耳の奥を吹きぬけてゆく
その影は星が降るように
穢れた断片を洗い流している
雪という仮の姿になり
からっぽのアスファルトに
悔恨を積もらせて
捨てる思い込み
せせこましく走る
クルマの速度をゆるやかにして
白銀の路面は
走行音を消してゆく
忘れかけていた静寂の気配に
人は純白になれるのだろう
吹雪き始めた窓の外
曇りガラスに文字を書く
だれかに逢いたくなるほど
つのる想いにつもる雪
ゆび先にぬくもり灯るほど
天から迸る華吹雪





posted by 水月 りら at 16:10| | 更新情報をチェックする

ガレキ売りの少女

売れないがれきを少女は売り歩く
ガレキになる前は
どれも重宝されていたもの
家や施設やお店など
車や船の剥がれた一部
みんな愛されていたものたち
ガレキになってしまったら
人に捨てられてゆく

ガレキは要りませんか?
姿形が変われば必要のないものですか?
役にも立たない壊れた愛のことは
思い出すことも邪魔でしょうか?
人が笑い合うために
生まれてきたはずなのに
崩されてしまった
無数の記憶の無言の無念が
雨やみぞれやあられや雪と一緒に
沁みこんでいます
小さすぎる列島にはこのガレキを
葬る場所が無いのでしょうか
小さすぎると感じているのは
ほんとうに土地の狭さでしょうか?
誰にも見えない少女が
ガレキを売り歩く

ガレキは要りませんか?
天に還してあげてほしいのです
振り向く人はいるけれど
誰も少女に気づかない
絆という名のその少女は
世界中で呼ばれ続けている
みんな美しい名前を知っていても
少女の抱えるガレキを
すべて買ってあげられない
絆はいつも大事に仕舞われて
抽斗のなか眠りながら
美辞麗句になっていく
それでも少女はガレキを売り歩く
少女はガレキを愛していた




posted by 水月 りら at 16:09| | 更新情報をチェックする

風のひと  風物語より

 湖の漣のように揺れていたわね。雲が立ち込めても、天を舞い踊る風は雲をちぎり、隙間から太陽の光をやわらかに置き換えて、届けてくれていた。まるで祝福のように降り注いでくれていたから、水面が竪琴の弦のように響いていたの。その音色に聴き入っていた。静寂を握りしめて、たかめ合うことを信じていたの。
  夢ではなかったのよ。だって、夢なら風の温度を感じることはなかったはず。冷たい風もあたたかな風も、分かっていたわ。上着を着たり脱いだりしながら、吹きぬける呼吸を受け容れていたつもりになっていた。だけど、そうじゃなかったの。嵐の種を蒔けば嵐を刈り取ることに、知識ばかりで固めて 行いのない蓋をしてはいけなかったのね。
  あらゆる風の行方の場所を知っていたかしら?吹き荒む暴風もなだらかなそよ風も、すべての風の行方は未来に向かって吹いていて、この世には過去に向かう風は存在しないこと。まるで時間の流れのように風は吹いていたけれど、風は時間ではなかったの。風が吹かなくても時間は流れていたから。
  魂のつながりに刻印なんて必要なかったのかもしれないけれど、わたしたちは夢のなかでは暮らせない。時間も風も流れることのない夢の世界では、魂は育まれないことを知ってしまったの。人肌を感じていたかったのならなお更のこと。許されるまで、向き合っていきたかったのよ。綺麗ごとなんて、つまらない。突き刺さる苦渋さえも温もりの波紋に溶かしてゆく、そんな心の異変を歓迎していたかったの。
  あなたはいつまで覚えていてくれるかしら。人が生まれてきたのは、消えた記憶を想い出すことだったの。あなたから過去の墓標が消えてしまっても、風の在り処を想い出してくれるかしら。あなたが忘れてしまっても、あなたの隣を吹き抜けていく風は、真実の愛だったの。愛をありがとう、と唄っているのよ。





posted by 水月 りら at 16:08| | 更新情報をチェックする

風の記憶  風物語より

風を辿る
何かの生きざまのように
温度がある
大気に太陽が反射して
地球は青い夢を
宇宙に伝えている
風の生まれた理由
それは気圧の高低
飛行と滑空の翼のため
風媒花のため
魂の故郷を憶い出すため

   *

地球人の知らない惑星では
風は翼になれない心を運ぶ
心を持つ人のために風は
神さまに与えられた賜物だった
電波も未発達なその星の人たちは
誰しも風に耳を傾けて
遠くの人に心を打ち明けていた
その星に暮らす人びとは
風と信じ合っていた
風への祝福のために
哀しいひとりをつくることはなかった
その星では風が吹き荒れても
傷つく人は誰もなかった

   *

そよ風は神さまの風
暴風は神さまの風ではない
風鈴の短冊を揺らす風
心を閉ざし根底の見えない人に
憐れみ深く吹く
そよ風は
貧しさに注ぐ祈りのように
地球を包み続けることを
地球が生まれる前から
宇宙に約束をしていた
人には内緒にしてこっそりと                               
風はすべての人のために
そよ風になっていると
耳元を吹きぬける




posted by 水月 りら at 16:06| | 更新情報をチェックする

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