2013年11月12日

港の翼

海の見える小さな町 この町の港は入り江の翼のようだ 鶴が飛び立つように出航する 白船黒船 むかしの人はこの湾岸から 飛べない船を見ていたのかもしれない 入り江の湾の形状が 鶴の舞う姿に見えたため 舞鶴と地名を名づけた人には きっと神が宿っていたのだろう 

この町に 飛べない船が無い羽根を休めに帰ってくること 波止場はそれを迎え入れ 埠頭は 青海原を揺られて独り立ちする 船の旅立ちを見送っている 巡り廻る船の現在のために この町の地名は予言のように 神により吹き込まれ 舞鶴という呼び名が与えられてから この地はずっと その加護を受けてきたのだろう

鶴のいない素朴な田舎町を 鶴によく似た地形は守護しているかのように 翼のない船舶の往来を傍観している それがこの港の宿命なのかもしれない 停泊している船舶の無き翼を引き止め続けることができないからだ

もしも この港のように寡黙に生きることを運命とされていたなら 翼のある真実の鶴はどこかで決心をして 現世を手放して飛び立っただろう もう二度と戻らぬために 船には書き残した手紙だけを置いて 主護神に届けようとしただろう

この小さな町の誰にも気づかれずに 主護神と愛し合った白い熾天使は その想い出を書き綴る 遠くに映る舞鶴クレインブリッジは鶴の翼 愛してしまったあなた(主護神)と繋がって あの橋から眺めた太陽と紺碧の空と海 大きな翼を広げて踊る二羽の鶴となり この地から悠久へと羽ばたくため 誓いの言霊を此処に記し 港から天空へと舞い上がる 




posted by 水月 りら at 21:47| | 更新情報をチェックする
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