2013年10月04日

観覧車

   Part 1

廻るために生まれた君は 廻らなくても観覧車であることに気づいてほしい 君がそこに存在するだけで生まれる瞬き 時間がどれほど雄大だとしても一粒の命がなければ 何れの時の流れも語れはしない 生と死の計らいは 巡る時空間を観覧する




   Part 2

あなたと一度も
観覧車に乗ったことがないのに
あなたと観覧車に乗って
空を大きく廻っていたことを覚えているの
それはいつだったのかしら
風になりゴンドラに流れて椅子に座っていたの
わたしたちはまだひとつの影だった
ひとり分の瞳を通して空を眺めて感じていた

どうして空には何もないはずなのに
何かがあるように感じてしまうのだろう、と
もうひとりのわたしへの問いかけは
あなたへの問いかけだったの

空が青く見えるときはね
青だと言って空が答えているから
空には何かがあるように感じられるのさ
あなたが応えていたもうひとりのあなたは
わたしだったの

なんの不思議もなくいくつもの空間を連ねて
ゆっくりと高いところに昇っていった
上のゴンドラにも下のゴンドラにも
わたしたちと同じ風のようなものが座っていて
あなたとわたしが話しているように
何かの相談をしているみたい

いくつもの風を乗せたゴンドラが
ひとつの輪になり廻っている
観覧車って無数の魂の繋がりだったのね

そして最上部で約束していたの
人間になるためにふたつに分かれて
できるだけ困難な茨の道を選び
濁流に飛び込み沈むがまま
引き千切れる痛みを背負っても
抜け道を見つけ出しその場所で出逢おうと
そして険しい峠の道標に笑顔を印し
捨て身の覚悟で超えていく
施せる身であるのなら果報なこと
施したことは忘れていこう
そんな誓いを交わしていたような……

観覧車を見ると思い出す
あなたと一度も乗ったことがないはずなのに
確かにあのゴンドラの中でひとつだった
生まれるまえのことかもしれない
あるいは息絶えてからのことかもしれない
今度、観覧車に乗ってみようよ
あなたの夢がわたしの爪の色になり
わたしの願いがあなたの瞳の色になったなら
わたしが思い出した記憶は

真実(ほんとう)のことなのよ






posted by 水月 りら at 19:31| | 更新情報をチェックする

曲がり角

人は生まれる前に
進む道を印した迷路を創作する
けれど誕生の産声と共に
忘却のレールが海馬に敷かれ
瞬間に創作迷路を忘れてしまう
成長に連れて訪れる
いくつもの謎の路地を
曲がりながら憶い出していく
遥かな過去の小さなお店で
竪琴を奏でていた少年の面影を
追いかけ続けていた
あの少年が爪弾いていた
短音階の旋律
何億光年前のことを
記憶していたのは魂だけ
振り向く人の内側に
少年と似たところを探してみても
いつも人ちがいだった
そのことに気づくまで
迷宮の路地を曲がり続けていた
どんな迷路も天空から見れば
曲がるべき角が見えているのに
魂の真実にたどり着くために
潜在意識に沈殿した濃霧の濁り
みずからの意志で吹き消せるまでは
迷宮であり続けてしまうのだった
少年が琴を弾きながら
死よりも恐れなければならないのは
魂の腐敗だと語っていた
そうだったねと悠久の歳月をかけて
太古の記憶に返事している
今まで出会ってきた人は
誰もあの少年ではなかっただけ
虚構の角を無数に曲がり
やっと出逢うべきあなたが誰なのか蘇る
この地を捨てよう
あの少年と同じ心を持つ
あなたのところに繋がる角を
何度も曲がり何度も出逢う
魂の真実は現世の形象には刻まれない
創作迷路の崩壊に刻印される
たったひとりのあなたと







posted by 水月 りら at 19:30| | 更新情報をチェックする

十字路

ネオンサインあふれた繁華街 キュービックジルコニアの輝きに見なれた十字路 視界のシグナルは不透明 喧騒と靴音が憂鬱に響くアスファルト 見てくれに囚われた窮屈なルールが 曲がり角に事件を沈ませる すべてはネガティブな思考が 低次元の使者を引き寄せて暗闇に迷い込む 自らが生み出したものが 自らに戻ってきただけだと気づいた人には 銀の蜘蛛の糸が垂れ下がる そんなお伽話もあったはずなのに 人はなぜ メッセージのある物語を置き去りにしてしまうのだろう 表層意識だけを刺激する浅い言葉の小話で その場を取り繕い 罪の意識もなく出回る紛い物 リスクに気づく心を奪っている ゆらゆら揺れる危うい現象 明るすぎるネオンの彩りばかりを浮き立たせ 壊れた街灯のことなんて なかったことにしようと蓋をする それで良いなんて 議論をすれば誰も賛成しないはずなのに 実行の選択では方向違いになっていることの違和感に 何も感じていない鈍さも 十字路の影に隠されていく 面倒だからと かすかな圧力に口を閉ざしてしまう それは支配へのプロローグ この世での評価や数字しか信じてはならないと 権力は魔物のように囁いている 抱き合うだけの快楽も秘すれば花なりと 偽りの家庭神話が生まれている それは病んだ愛のエピローグ 愛し合っているのなら なぜ? 不要なものを捨てて結ばれることを拒むのだろう 大通りには途切れることのない車の走行音 神聖な星空は灰色の潜在意識に包まれて見えないだけ 不眠の煌めきに佇みながら それでも明日の朝陽を待っている 太陽の炎は角度を選ばず燃え滾るから 真実の美とはどんな角を曲がっても美であること 美は無限角 すべてのネオンが消えても くすんだ夜空に星は光らない 薄皮を剥ぐと廃墟の唄が耳を横切っていた 人を見つめるたびに 十字路が垂らした無数の雫を 誰も知らなくても 夜空の向こうの 天空の弦は廃墟の唄を慰めていた 
  


posted by 水月 りら at 19:27| | 更新情報をチェックする

とおりゃんせ

なまえをしらない
まがりかどを
とおりゃんせ
まがりかどは
いくつある?
まがるかどは
ひとつじゃない
ひとつしか
みえないのなら
さっかくしているだけ
みえないかどを
とおりゃんせ
まがりたいと
おもったぶんだけ
かどがある
おしみなく
ふりそそぐ
たいようの
いつくしみが
まがりかどの
みちしるべ
ごわさんのみちを
とおりゃんせ
ここはにもつを
すてるばしょ
だぁれにも
しられなくても
どこのだれにもならない
つよいかどを
とおりゃんせ
どこにいても
ことばとおこないの
いっちしたかどを
とおりゃんせ
まちがったおきてを
うちこわす
かげろいがたつかどを
とおりゃんせ




posted by 水月 りら at 19:24| | 更新情報をチェックする

太陽の果実

愛、それは言葉だけではなかった
生まれてから一度も尽きることのない
おそらく、たぶん、古くなるほど
もぎたての果実のようになる
その潤いは育むもの
実をならなくする誤りの呪文を
解き放し花の命を超えて実を結ぶ
甘い恵みの無償の果肉を噛みしめる
それはいつだって言葉だけではなかった
五感よりも天上の
銀河の感覚から溢れ出し
頭の頂きから足の爪先までを
何度も通り抜けては透きとおり
透明になるほど存在は愛おしくなる
それはやっぱり言葉だけではなくて
分かち合っていた所為に結ばれていた
たとえば青く酸っぱい時間の
頬張りにくい果肉でさえも
問題とはしなかった
難題を解き明かすたびに
幸福な果汁を搾り出す
そしておのずと美しくなり
ある意味では恋心を捨て
儚い果実という脆さを抜け出し
熟れた果実の真実には嫉妬もなかった
心の種が果実に宿る時
瑞々しく言葉は生き返る
愛、それは心と言葉と所為が
ひとつの美味な実りとなること
とめどなく共に伸びやかに
実りの質はまろやかな繋がりを醸し出す
たった一個の果実の真ん中には
揺るぎない太陽が誕生する
心と言葉と所為のすべてが
時を捨てた太陽の果実となる人を
宇宙は、愛、と呼んでいた








posted by 水月 りら at 19:23| | 更新情報をチェックする

白龍雲

 発車待ちのバスの窓硝子には、向かいのブルの窓が鏡のように映っていました。遠い空にそびえるビジネスホテルの屋上から、炎々と白い煙が噴水のように湧き出し、天へと飛翔していました。煙はむくむくと白い鱗になり、蘇生を呼んでいるかのように、わたしの瞳に焼きついてきました。朝陽に照らされて、その縁取りは黄金に輝き、蜃気楼を往来する白龍の姿になっていきました。宝石のようにきらめく鱗が、まるで貴方のようだったので、わたしはうっとりと見とれていました。
 発車と同時に、わたしはその映像から離れなければなりませんでした。わたしは、もっとあなたに惹かれていたくて、白龍のそばに置いてくださいと、天の神さまに祈りました。すると、神さまはわたしの魂だけを輪ゴムのようにゆび鉄砲で飛ばすと、わたしは急に眠くなりました。目を閉じると、暗闇に朝陽が射し、其処はビルの屋上で、わたしは輝く鱗の白龍のそばにいました。貴方は誰なの?.と、尋ねなくても貴方のことをずっと前から知っているような気がしていました。ただ、わたしは誰なの?と、尋ねてみたくなっていました。なぜなら、貴方のなかには、いつも、わたしが存在していて、愛する貴方は、未知のわたしが潜在している貴方だったから。
 貴方が白い龍だったとき、わたしは貴方に握られていました。あなたを愛するための分身だったのです。遥かな遥かな未来のことは、遥かな遥かな過去の出来事の意味を形象しています。だから、貴方の声がわたしの胸に木霊した瞬時に、神さまは貴方の溢れる純粋意識を白い龍にして、白昼夢のなかで逢わせてくださいました。見る見る間に灰色の雲をかき分け朝陽に護られて、貴方は天を雄々しく巡り廻っていました。わたしは、天の配達夫に、そっとお願いしました。貴方の空に虹の橋を架けてくださいと。表層と潜在の分かれた意識の世界で支え合うふたりの、天気雨の心に七色を届けてくださいと。
 貴方が白い龍となった日には、貴方の空に届けましょう。貴方の片隅に、わたしの刻印となる消えない七色の虹の架け橋を。




posted by 水月 りら at 19:22| | 更新情報をチェックする

風琴神話

   しゃぼん玉のシナリオ
              

天使たちは
しゃぼん玉のシナリオを
彼岸の神さまに届けています
しゃぼん玉はみんな
シナリオを作って生まれてきます
泡のなかのなな色は
それぞれのシナリオの輝きです
お日さまはいつも
しゃぼん玉のシナリオを照らしています
屋根まで飛んでこわれて消えても
しゃぼん玉はだいじょうぶ
天使たちが
神さまにシナリオを届けているからです
泡のなかのなな色が
彼岸に飛んでいくことができるように
神さまは道を作って待っています

だけど
儚い泡は此岸の環から
離れていくことを寂しく思ってしまいます
天使や神さまはいつも
そよ風にかくれているので
こわれやすい泡は瞳を閉じたまま
別のシナリオに作り変えてしまうのでした
シナリオの中でシナリオが
ちぐはぐに踊り出し
天まで飛ぼうと勘違いをして
しゃぼん玉はなな色を失います
そして屋根までも届かずに
こわれて消えてしまいます

天使たちが彼岸の神さまに
届けたシナリオだけが
魔法のなな色に輝きます
作り変えられたシナリオは
此岸のはだかの王さまが
おいしそうに食べてしまうので
次に飛ばすしゃぼん玉には
邪念がよりいっそうふくらむます
だから、しゃぼん玉は
天まで飛ぼうなんて
思わなくてもいいのです
なな色のシナリオを抱きしめて
せいいっぱい屋根まで飛んで
彼岸にたどり着けば生まれ変わります
金色のシナリオに
  






  ゆふすげびと



天界から舞い降りてきた少年は
此岸で暮らしているうちに
彼岸の神さまに
愛されてしまいました
彼岸の神さまは少年の解き放す
水晶の言葉に憧れていました
現世の向こう岸から
少年の言葉にじっと耳を澄ませると
彼岸の国は曇りを知らない
水晶のように透き通りました
そして彼岸の百花は輝きました
闇夜を飾るゆふすげの花は 
水晶になった彼岸の国で
あまりに美しく輝いたため彼岸の空は
金色の針水晶のようになりました
彼岸の神さまはその美しさに
銀色の涙を流しました
すると少年の持っていた針水晶に
虹の輝きが宿りました

その針水晶のあまりの美しさに
此岸の神さまは現世にも
金に輝き虹を浮かべる水晶が欲しくなりました
此岸の神さまも少年の言葉に
耳を澄ませて聴いていました
けれどもあまりに多くの雑音が騒々しく
此岸の神さまにはくぐもった少年の言葉が
かすかに耳を通り過ぎてゆくばかり
世の中に言葉があふれていても
花々のくつろぎは稀なことでした
此岸のゆふすげの花びらは一枚ちぎれて
雨も降らないのに哀しげに濡れていました
此岸の神さまはできる限りの魔法で
夕陽を金色に輝かせました
黄金の漣のような夕焼け空に
岸辺のゆふすげの蕾は
遥かな過去を思い出しました
そして花びらは夕陽を包み
滾る愛を唄ってひらきました
岸辺に暮れ残るゆふすげの花を見て
少年の言葉は神聖な山の水のように
あふれだしました
此岸の神さまは気づきました
花々のくつろぎの唄は
果てない魂に刻まれていくことを
現世ではなく彼岸にまで届く
ゆふすげの神の宿る
たったひとりの少年の愛は
此岸の神さまの心に
虹の架かる針水晶を届けていました
    
 





橙下愁曲



彼岸に生まれた稀な御霊の蛇姫は 此岸に生きることを 天界の神さまに許されて 鉄格子の迷宮から出してもらいました

にんげんになった蛇姫は 人には感知できない器を持っていました その器の底は太陽が映らずに 偽りを映してしまうものでした ほんとうはにんげんが持つことは 許されていないものでした 

美少年に恋をした蛇姫は 少年の嘘を見抜くのが恐くて 器を庭の土に埋めてしまいました 美少年の心の太陽を探し求めて 少年の言葉を信じようと けなげに耳を傾けていました

美少年の心のどこかには 蛇姫よりも美少女が現れることを願っていました 少年は嘘をつき続けましたが その嘘はきらびやかなネオンで照らされていたので 器を埋めた蛇姫には みやぶることができなくなっていました

蛇姫は少年に捧げる言葉を 洋橙の傘に綴りました 来る日も来る日も言葉に灯かりを点し 少年に送っていましたが 少年はネオンに戯れる夜光虫の餌にしていました

天界の神さまは土を掘り起こし 蛇姫のそばに偽りをみやぶる器を戻すことにしました 蛇姫がかならず見ることができるように 包み紙に少年の名を書き 少年からの贈り物のようにして 蛇姫に届けました

器を覗いてしまった蛇姫は 器の底に少年のすべての偽りを見つけてしまいました 美少年のほんとうの姿を見た蛇姫は 愛の言葉を書いていた洋橙を粉々に砕きました 少年の記憶から みずからの存在そのものを消してしまいました 蛇姫を愛せずにいた少年が偽りから解放されてゆくために

少年は別の少女を見つけても 嘘をつき続けていましたが 天界の神さまは少年が良心に気づくまで 黙って見守られていました 少年が心に抱く美少女に出逢えるためには 蛇姫の持つ鋭い爪に惑わされてはならなかったのです  

この此岸を照らして続けていけるように 天界の神さまは蛇姫を太陽の炎の一部にされました 少年が光に導かれ真実に出逢えるようにと 蛇姫は祈り続けています 太陽の光が淡くなる夕暮れは 蛇姫の実らなかった言葉が 洋橙を想い出し悲恋を 蜜柑色に唄っています
    

    



posted by 水月 りら at 19:20| | 更新情報をチェックする

月の記憶

まもなく月蝕の幕が開く
月灯かりのアスファルト
手をつなぐ夜道の五線譜に
ト音記号を唄うあなたの靴音と
ヘ音記号を唄うわたしの靴音
月の記憶のようにリズムを刻む
その鼓動に望月の光こぼれて
夜空は藍色
雲が流れて月の光はかくれんぼ

さよならの鐘のように欠ける月
ゆっくり小さくなって
地球の影に抱かれている
遠くても近くても
記憶をかさねて深まるものがあることを
呼吸のように伝える光と闇
やがてかさなり合って
朔月にゆだねた願いの夢
眠らせた意識のなかに熟成する

月がどう見えたとしても
月を愛する気もちは変わらない
それは存在に惹かれているから
そう言ってあなたは両手を伸ばし
指で作った輪のなかに月の環を重ねていた

ふたたび満ちてゆく月を浴びて
腕にした乳白色の月長石の虹の輝きは
未来を暗示しているという
明日もおなじ月をながめて
想いだしているだろう
月の満ち欠けは光と闇の織り成す旋律
昨夜の月とちがうものを
見つけて愛している
月を輝かせているあなたに
触れたくて月夜に手を翳す

月はいつもおなじ側を
地球に向けているのに いつもちがう顔
おなじなのにちがっている
色も形も位置も
感じる距離の長さもちがっている
遠くのものが傍にあるような感性も
近くのものとの底知れぬ深さの共鳴も
月の魔力の為しえる技が知らせている
かくれた影法師を照らす月の魔法
闇があるから愛になる
光になるから愛に出逢う






posted by 水月 りら at 19:19| | 更新情報をチェックする

水の太陽

うつくしいものとは
ありのままの姿のことを言うのだろう
流されてゆくことに
ときどき逆らってみたくなりながら
あなたになら流されたままでもいい
どこから生まれてきたのか
あなたが何年生きてきたのか
ほんとうのことは知らないけれど
川は無心で流れているの
たどり着く場所なんて
なるがままのところ
たとえ、其処が汚れていても
あなたは選ぶことなく
濁りのなかに流れてゆく
それがあなたの生き方だから
混濁してしまっても何も見失わない
あなたは流れていこうとする
ある時は時の流れを追いかけて
またある時は時の流れを追い抜いて
そうして時の流れに追い越されても
あなたにとっては指の先を
吹きぬける風を見送るようなもの
だから、水の音色は人の心を癒せるのだろう
光が心おきなく休める場所
あなたの中に生きようとして太陽は
水面に輝く分身を降り注ぐ

(水の流れは愛の肖像
 浮世と冥土のあわいを
 流れる三途の川は
 命あるものにもないものにも
 愛を伝えているというあなた)

流れることに憧れて
水になろうとした太陽の分身の
光をうつくしいと
感じる心がうつくしいのだと
水面に映る幽玄の恒星は
あなたに知らせていた
だけど大海原が最後の場所ではない
地上の水鏡のすべては
太陽を水に映して
輝きと愛し合っている






posted by 水月 りら at 19:17| | 更新情報をチェックする

蜩(ひぐらし)

水面に何かが落ちて
幾重にも広がる波紋のように
せせらぐ川の向こう岸から
きみの声が鳴り響く
瀬音とかさなり
いつまでも明るい夕暮れの
和らぐ太陽から溢れ出る
燃え滾る雫のように
手のひらにこぼれ落ちてくる
その声に途切れた文明の
切れ端を憶い出すのはきみが
土の中にいた沈黙の調べを濡らし
羽根を擦り合わし最善を
尽くしているからなのだろうか
幸せを追いかけて栄えた豊穣には
心の微笑は見つからない
衰退への甘受に隠されている
その気宇を無心に探しているのに
人工の煌きに
美の感覚を奪われていた
遠い過去からの繰り返し
滅びてはまた築く
儚い維持の業への赦しのように
飛沫のように迸るきみの声
人はそれを蝉時雨と呼んだ
あまりにもの哀しく
冷めたぬくもりに囁くように
眠らない魂を慰めて
鳴き尽くすきみの数日
ほんとうは何百年もの時間を
その唄に捧げている
土の中にいた長さなどほんの数秒に
書き変えてしまうほどの
命の限りにすべてを賭けたきみの姿
灼熱の風を浴びるほど
無性にきみに逢いたくて
その声に棲む精霊に触れたくて
瀬音のほとりに佇む夕暮れ
どこかの枝から落下する一匹の
蝉の気配を夕陽は傾聴する



posted by 水月 りら at 19:16| | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。